20180424

People Treeのカタログを読んで

フェアトレードのことを知ってから、できることならフェアトレードだとわかっているものを買いたいと思っている。フェアトレードのブランドの1つPeople Treeから春夏物のカタログを送ってもらった。

カタログを見るとき、昔はデザインと値段しか見ていなかった。デザインが気に入ったら素材を検討し、値段も妥当なら、サイズを確認して、という感じだったような気がする。もしかしたら、イメージと値段、サイズと素材情報くらいしか載っていないカタログがほとんどかもしれない。

People Treeのカタログには、作ってくれた人たちのことが紹介されている。どんな経緯でできた生産者のグループなのかが書かれていたり、カタログに載っている商品を作るのにどんな苦労ややりがいがあるのか、また、フェアトレードの生産者グループに入ってどんなふうに暮らしがよくなったのかが語られていたりする。写真だけでは「買おうかなアンテナ」に引っかからなかった服や小物も、ここで語られていることを読むと、もう一回見てみたくなる。

素敵な刺繍が施されたワンピースがあって気に入ったものの、買えそうな値段ではなかったので検討から外した。このワンピースが生産者さんの紹介ページに載っていて、そのワンピース1着の刺繍を仕上げるのに16時間かかると、熟練の職人さんが語っていた。刺繍だけではなく、ワンピースに仕立てる縫製、布の染色、布を織る行程、糸を紡ぐ行程、原材料を育てる行程もある。1着の服をつくるのにこれだけ多くの人々の労力がかかっていると思うと、最初高いと思ったその値段が、「本当に高いだろうか?」と思えてくる。

服を縫ったり、アクセサリーを編んだり、靴下を繕ったりするようになって、着るもの、身につけるものを作るのにどのくらい時間がかかるのかがよくわかるようになった。ミシンを使わず、すべて手縫いなので、ズボンは1着縫うのに3日くらいかかる。手縫いでつくった衣類には、ミシン縫いにはない柔らかさがある。「販売しないの?」と言ってもらうこともあるけれど(お世辞かもしれないが)、1着仕上げるのに最低3日はかかるので1日1万円として3万円+材料費で買ってくれる人がいるだろうか。それをナリワイにすると仮定したら、月に25万円くらい収入を得ようと思えば、月に9本くらい売れてほしいところだが、月30~31日のうち3日✕9本=27日間も作業にかかりきりになり、ほかのことができなくなる。生活に余裕を持とうと思うと、1本あたりの値段はもう少し高くしたいところだが、このご時世、そんな値段ではなおさら買う人はいないだろう。

つくることをあまりしていなかったころに、手縫いの衣類を販売されている布モノ作家さんの展示会を見に行ったとき、値段が5万円とか8万円とかして、当時はびっくりした。だが、今思うと正当な値段だと思った。そうやって思い返してみると、刺繍に16時間かかるというワンピースの値段はむしろ安いのかもしれない。それに、普段の生活のなかで、値段の感覚がフェアではない状態に偏りがちなのかもしれない。

モノの値段というのは難しい。どのような品質のものが、どのように作られたのかもわからないようなものでも、高級なイメージのブランド名を冠しただけで、何十万、何百万という値段がついて、それを多くの人々が欲しがるという現象も起こる(フェアトレードのブランドに、何十万、何百万という値段を払う人もそのうち出てくるのかもしれない)。

People Treeのカタログには、つくり手さんたちの写真も載っていた。その表情は、やさしい笑顔がこぼれていたり、真剣なまなざしだったり、仕事に喜びや誇りを感じているように思えた。たぶん、暮らしに余裕が持てないような賃金ではないのだと思う。なるべくなら、こういうお店で買い物がしたいと改めて思った。

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