20180106

ウーマンラッシュアワーの漫才のこと

社会の問題を語るとき、まじめにするとうまくいかない。しらけられたり、「げ、難しい話来たぞ」と身構えられたり、ケンカにもなりかねない。建設的な議論にはユーモアや笑いの要素が必要だと思う。しかし、社会の問題がこれだけあるというのに、日本のお笑いでは社会の問題を語る人が少ない。

風刺も笑いの一つの形式だが、日本のお笑いのネタではほとんどお目にかからない。音楽の世界や映画の世界には言いたいことを表現するアーティストが出てきているが、お笑いの世界にそういうアーティストがいないのはさみしい。とくにテレビなど、マスメディアでは、政権やスポンサー企業に都合のわるい話は避けられる傾向にあることはわかる。それでも気骨のある芸人さんは登場しないものなのだろうか。

そう思っていた矢先、ウーマンラッシュアワーというお笑いコンビがフジテレビの「The MANZAI」という番組で社会問題を語ったネタを披露してくれたことを、映画監督の想田和弘さんのツイッター投稿で知った。

(「望月記者」というのは東京新聞の望月衣塑子記者のこと)

ツイッター上では、YouTubeにこの動画が投稿されるとすぐに消されるという声も散見された。ブログを書かれている方がご本人にツイッターで承諾を取った上で書き起こしをしてくださっていたので、どんなネタだったのかはこちらをご紹介したい。
ウーマンラッシュアワーTHE MANZAI 2017 伝説級漫才 全文書き起こし【ご本人承諾】(ボケペディア)
こちらも会場の雰囲気なども書かれていてわかりやすい記事。
ウーマンラッシュアワーが『THE MANZAI』で怒涛の政治批判連発! 原発、沖縄基地問題、コメンテーター芸人への皮肉も(lite-ra 2017/12/18)
最初に感じたことは、よく言ってくださったなぁというありがたさ。次に思ったのは、トーンとテンポが絶妙で言葉がやけに頭に残るということ。原発問題、被災地の復興問題、沖縄の米軍基地問題、北朝鮮の問題、アメリカに盲従する姿勢など、多数の問題に触れられていたが、やけに印象に残って、時折フラッシュバックして頭のなかで音声が繰り返される感じがあった。こういった問題を全く考えたことのない人でも日本って実はそんなに問題があったのか、と気づくきっかけになるのではないかと思った。気づくきっかけにしてくれる人が全員ではないにしても、少しでも増えることにはつながるのではないだろうか。

自分に直接的には関係がないように思える問題でも、よく知ると、実は自分の生きづらさや将来の不安にものすごくつながっている。今ある問題に早く気づけば、早く行動を起こすことができる。早く行動を起こすことができれば、早く問題が解決できる。早く問題が解決できれば、一生のうちで安心して心地よく豊かに暮らせる期間がそれだけ長くなる。いつまで続くかわからないまやかしの安心に浸っていたいからと、権力が覆い隠し、ごまかすままに、現実から目を背け続けていると、いつまで経っても本当の安心や豊かさを手にすることはできない。

情報を出す順番も、共感を持ちやすい話題から核心に引き込んでいくという感じで見事だった。たとえば、最初の原発のネタは、ご自身が福井県出身であることから始まって、福井県の場所が北朝鮮の向かい側であること、小さな県内に4カ所も原発があること、原発がそれだけあっても電気は福井県内ではほとんど使っていないことが一瞬で頭の中に入る。この漫才で初めて知った方には、北朝鮮の向かい側に原発が4カ所もあるということがどういうことを意味するのか、ということも考えてみてもらえたらと思った。

ネタとしてはおもしろくないだとか、侮蔑的なコメントも見られた。ツイッターで噛み付いていっている人もいた。それは予想の範囲内だったと思うし、テレビに出られなくなったりするリスクも考えられる。それでもこのネタを披露してくれた勇気がすごい。その勇気を後押ししたのは当事者の生の声だった。
罵倒、怒号、論破、称賛、感謝、感動…さまざまな声がひしめくなか、「よくやってくれた」とは思っていても、いろんな事情で言いたくても言えない人、言葉で表現するのが苦手な人、忙しすぎて書く時間の取れない人…そういう人たちが村本さんのツイッター投稿に「いいね」を押しているのだと思う。私が見たときには5万いいねを超えていた。
この良さがわかる人が5万人以上(実数ではない可能性もあるにしても)いるというのはまだまだ日本も捨てたものではないのかもしれない。この5万人以上の中には、批判を恐れずに勇気ある声を上げてくれた人、声を出せない人や声を上げても小さすぎて届かない人の声を代弁してくれた人のことを、孤立させてはいけないと思って反応した人もいるかもしれない。

このネタを披露した後の現象に対する考えについて、Withnewsのインタビューで語られていた言葉も印象的だった(太字は筆者)。
 さらにネット上では、この漫才を入り口に、政権批判をする人や、そういう人を嘲笑する人も出てきています。その状況を村本さんは「どちらも、僕のことを利用しているだけ」と言います。

「僕は沖縄の基地について、賛成も反対も言っていない。考えようと言っている。右も左もなく、自分のスタンスを持って、相手を尊重しつつ発言していけばいい

論破なんていう言葉は、議論が未成熟なこの国ならではの言葉。ビルって1人じゃつくれないじゃないですか。色んな人の力が合わさってビルができる。議論もそう。論破ってそれを壊すじゃないですか。ずっとビル建たないままですよ
ウーマン村本に聞いた「THE MANZAI」ネタへの決意「自由に発言する」(Withnews  2017/12/21)
社会の問題に関心を持つきっかけ、考えるきっかけを、ウーマンラッシュアワーの二人はお笑いというエンターテイメントの形式でつくってくれた。それぞれの現場で、自分が本当に思うことを表現しあって、まともな世の中をみんなで創造していけたらと思った。

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