20171212

企業による古着回収、本当にリサイクルされているのだろうか

リユースやリサイクルを目的にした衣類の回収をするアパレルメーカーも増えてきた。お店では商品を安くたくさん売り、たくさん買ったお客さんにはたくさん捨ててもらってまたたくさん買ってもらうという、消費を加速することに重きを置くファストファッションでは、大量の衣類がゴミになる。これに対する批判の声も大きくなってきたため、CSR活動として取り組むようになったのだと思う。

ファストファッション大手のH&Mでも衣類の回収を実施し、積極的にCSR活動としてPRしてきた。しかし、回収された衣類は本当にリサイクルされているのだろうか? 新品の衣料でさえ、H&Mは2013年からデンマークだけでも年間12トンもの衣類を焼却処分しているという。デンマークのジャーナリストたちが明らかにした。
Why is H&M burning new clothes?(Greenpeace 2017/11/7)
記事によると、焼却されているのは、デンマークだけではなく全世界でだとH&Mは認めているという。ジーンズのラベルに鉛が使用されているなどの理由で、販売もリユースもリサイクルもできない場合のみ焼却していて、焼却処分はあくまでもほかに方策がない場合の最終手段とH&M側は主張している。それでもデンマークの一国内だけで12トンというのは多すぎると思う。リサイクル素材の使用や古着の回収量など、アピールになる情報は長々とサステナビリティレポートで報告されているのに、こうした情報は載せていないらしい。こういう情報こそ開示してもらいたい。

この記事では、それなら鉛のついたラベルだけ外してあとはリサイクルすればいいのではないかと指摘している。リサイクルよりも燃やしたほうが安いから、というのが本音だろう。ほかにも疑問に思うことはある。鉛は焼却したら空気中に放出されないのか? 焼却灰に鉛は残らないのか? その焼却灰は埋立地に運ばれるが、鉛が残っているとしたら土が汚染されるのでは? そもそも、鉛を使わなければいいのではないのか? 

これは氷山の一角なのではないかと思う。H&Mだけではなくほかの会社でも、回収された古着が果たして本当に有効に活用されているのか、明らかにしてもらいたいし、新品の衣料品を焼却処分するなど、環境負荷をかけているのであればそうした情報も知りたい。そうすれば、環境への配慮を大事に考えてまじめにものづくりをしているところから買いたいと思うお客さんに必要な情報が届く。本当のことを知れば、少し高くてもこっちのほうがいい、と思う人だっているはずだ。

以前、『True Cost』という映画を見て、ファストファッションの安さの裏側にある「本当のコスト(代償)」を知った。

ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~(字幕版)

大量に買わせることを前提にものをつくると、なるべくコストを抑えることが重視されるため、環境に有害な染料や素材を避けることは難しく、製造に関わる労働者の人たちは劣悪な環境で低賃金で長時間働かされたり、製造を請け負う業者は工場の安全性を確保する余裕もなくなったりしていた。自然環境を痛めつけ、製造にかかわるたくさんの人々がたいへんな状況で製造してくれたものが、これほど大量に燃やして捨てられていることをこの記事で知って、本当に悲しくなった。

たとえばパタゴニアなど、修理しながら長く使うことを前提に、リペアサービスを提供しているメーカーもある。そうした会社は、リサイクル素材の開発や使用に積極的だったり、有害物質(染料に含まれる重金属など)を河川に流さないようにするなど製造時の環境負荷にも配慮していたり、原料の生産時の環境負荷や生産者の健康被害を防ぐために無農薬・無化学肥料の素材を積極的に取り入れていたりする。こうしたメーカーの製品はファストファッションのブランドの製品に比べて値段は高いが、大事に長く使えるので、愛着もわいて幸福感も増すし、ゴミも減らせるし、ゴミにするときにも環境負荷を最小限に留められるし、買い替えが少なくて済むから結局は時間とお金の節約にもなる。お金よりも良心が重視されている企業を微力でも支えていきたい。