20130506

直の体験

日頃、パソコンの前に座って、
調べ物をしてまとめたり、
書物をしたりする仕事が多い。

パソコンの前に座っていると、
インターネットでなんでも調べられていると錯覚して
なんでもわかったような気になってくる。
なんだか自分がすごいやつになったような気がしてくる。
いかん、いかん、悪い兆候だ、と自分を戒める。

最近、「偉いさんの肩書きがついていた人のなかには
会社を定年退職したあとでもまだ偉い気がとれなくて
横柄な態度をとる人もいる」という話をきいて、
会社など限られた世界にいても、気をつけないと、
パソコンの前と同じようなことが起こるのかもしれないと思った。

私にとっては、直の体験をすることが、
そういう悪い心にガツンと衝撃を与えて、
謙虚な心を取り戻させてくれるいい薬になっている。

たとえば市(いち)などで、出店者さんや
たまたま居合わせたお客さんと話をするなど、
人と人との直のコミュニケーションをとると、
全然だめだ、まだまだ人間の修行が足りない、と反省できる。

畑に行って野菜を見ていると、
わからない不思議なことがいっぱいある。
朝と昼と夜で全然表情が違う。
無数の生き物の不思議な営みのなかで
野菜が育って、それを食べることができて
自分が今ここで生きているのが不思議になる。

自分に見えている世界がごくわずかであることを思い知る。

山に行ってみるとますますわからないことだらけだ。
暖をとったり煮炊きするのに必要な焚き火も
教えてもらってはじめてできるようになった。
できるようになったと言っても、
まだ火を起こすことすらできないし、
焚き火を絶やさないようにするのもたいへんだ。
大きな虫はまだ怖いし、蛇に噛まれたらどうしたらいいかもわからない。

生きていくために必要なことすらできないひ弱な自分を思い知る。

自然と人。
生きていくうえで関わりあう存在との直の体験。
それによって自分を知り、謙虚さを取り戻す。
その体験をなるべく身近にしておきたい。