20160302

自然派でも意外に男女差別の意識が乏しい気が。マクロビの陰陽論が生んだ男女の役割観のせい?

【旧暦睦月廿四日 雨水 末候 草木萌動(そうもくめばえいずる)】

経済成長よりも自然と調和した生き方に関心のある人たちは、個人の自由を尊重するちょっと新しい感性を持っているのかな、と思いきや、ジェンダー意識では、意外に古くてびっくりします。



もちろん全員が全員そうではありません。

でも、ジェンダー観が古い自然系の人って、意外と多い気がする。一見(いや、やってることも)、超ヒッピー系な人の口から「身重の奥方」という言葉を聞いたときには目玉が飛び出るほどびっくりしました。

オルタナティブとか、「進んでる」とか、「目覚めた」とか言う人たちなのに、ジェンダー意識は旧型だなーと感じることがあります。男が外で働いて、女が家を守るもの、という封建時代の男女の役割観に縛られている。


これは、マクロビ(マクロビオティック)の陰陽の考え方と、マクロビ好きの人たちに影響力のある人物の考え方を鵜呑みにしている人が多いからなのではないかと推測しています。

マクロビの基礎となっている陰陽の考え方(食べ物だけでなく、なんでも陰と陽に分ける)で、女は陰、男は陽と言われています。

だから、男と女の役割は違う、と。だれが決めたんや?と突っ込みたくなりますが、多くの人はそれを信じ込んでいます。

ちょっと検索してみたら、反論している人は見当たらず、むしろ、今までフェミニスト(女性の権利向上について意識のある人のこと)だった人が、マクロビを勉強後、男女同権を目指したことを反省して、男女差別に改宗してしまっているくらいでした。

マクロビ好きの人ならたいてい知っている自然療法で有名なある大御所の先生が、「男女同権でも役割は違う。女は台所に立って命を育みなさい」というようなことを講演でおっしゃっていました。

職業でバリバリやっている女性が、女性が担うものとされている家事を、「能力が低い人のすること」と見なして、家事をする女性をバカにする風潮をたしなめる意味もあったのだろうとは思います。

手間ひまを惜しまずに、料理を作り、家庭を清潔に整えて、家族のこころと身体の健康を保つのは、命を守る医師のような尊い仕事であって、見下げるなんてとんでもない立派な役目だと私も思います。

でも、女性だけがそれを担うのが当然、と思われているのは、変だと感じます。そんな立派な役目なんだし、別に男性がやったっていいんでないの? 家事は女の仕事って決めつける必要はないのでは。

女は陰、男は陽、だから役割が違う。男は「天のエネルギー」を受け、女は「地のエネルギー」を受けている。だから男が「主」で、女は「影」で支えるべき、女は「畑」、だから家庭を守るべきというようなことを、すばらしいことのように綴っているマクロビの教師もいました。

それを信じちゃって、自分の本当にしたいことや、誰かが本当に望む生き方を、否定したり、押し込めたり、「陰陽のコトワリ」に反するとジャッジしたりとか、本当に不毛だと思います。

男だろうが、女だろうが、生物学的なオスかメスかで、どう生きるべきだなんて、生まれたときから勝手に決めつけるなんておかしいと思う。一人ひとり、固定観念や社会通念に囚われずに、自由に、自分が本当に望むこと、自分に合うことを選んでいくほうが、色とりどりで多様で柔軟でおもしろい世界になると思います。

少しずれますが、この前、自然系のお仕事をされている女性が、女性は感情の生き物で、感情は子宮に溜まるから、生理がある。生理で感情を排出しないと女の人は死んでしまう。男性はそうではないから生理がない、というようなことをまことしやかに語るので、本当にびっくりしてしまいました。感情と血との間に、一体何の因果関係が証明されると言うのでしょう。ここまで来ると支離滅裂です。じゃあ鼻血も溜まった感情の排出なのか? なんとなく「そうなのかな?」って説明がついてしまうのが怖いところで、結構信じ込んでいる人も多いようです。

だれが言い出したか知らないけど、だれが決めたにしても、自分と同じ人間が決めたことです。

自分で直感的に実感できるなら、もしくは理性的に考えて腹に落ちるなら、信じればいいだろうけど、そうでないなら、無理に自分に信じこませる必要などないと思います。

食べ物について、カリウム分が多くて身体をゆるめる働きがあるものは陰、ナトリウムが多くて身体を締める働きがあるものは陽、寒いときに育つ身体を温める働きのあるものは陽、暑いときに育つ身体を冷やす働きのあるものは陰、という考え方は理解できます。食べてみて実験しても、そういう感じがします。

でも、私は「女は陰だから、男を主人にして、家庭を守るのが役目」という考え方には賛同できません。

マクロビの先生が言っているからとか、大御所の先生が言っているからとか、そんな理由で盲信することは、私はしません。納得が行かないものは使う必要はないと思います。

考え方を明らかにしてくださっているのはいいことです。ある大御所の先生の考え方は尊重します。大正生まれでいらっしゃるので、育ってきた時代背景から考えても、こういう考え方に達するのは当然のなりゆきだと思います。ですが、私はこの考え方を取り入れることはしません。

これを聞いた人たちが鵜呑みにして、自分に良い影響を与えるものかどうか吟味しないのはよくないことだと思います。鵜呑みにした人たちが、意見の違う人たちのことを、「あいつわかってない」と蔑むのはもっといけない。

こういう考え方をする人もいるけど、私はその点については違う考えを持っている。

私と似たような意見を持っている人でも、ある点においては少し違っている。

それぞれの頭で考えて、それぞれの意見を形成し、異なる意見も排除することなく、尊重して、お互いに気持ちよくいられるよう努力する。そして自分の考えに固執することなく、多様な意見に触れていくなかで、より真実に近いものに出会ったら潔く誤りを訂正していく。

それが世界のバランスを保つ上で最も重要なことだと、私は思います。

みんな自分の頭を持っているんだから、自分の頭で考えたらいいのにと思います。なんでみんな、自分の頭で考えるのをやめるんだろう。大御所だろうが、大先生だろうが、自分の心と頭を乗っ取らせたらいけないと思います。

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